2009年06月20日
「伏見桃片伊万里」23
「無力無能でない人間の方が、この世にゃ少ないと思うがな。俺がこの塾にきたすぐの頃、お前に圧倒されたよ。こいつにゃ敵わないって。酒が、巧くお前を回してた」
「とんだ見掛け倒しだったな」
「俺もな」
机上の蝋燭、灯が揺らいだ。
横たわる慎一郎の童顔が、一瞬苦笑したように見えた。
「人に何んぼのこと出来るもんか。無力無能で。見っともなくて、無様で、支離滅裂で。所詮、人は泥人形の裔さ。丁寧に造られようと飛沫だろうと」
「女渦か。畜生、初めから飛沫たあ出来が違う。うん、一瞬でも、躊躇しなかった。してりゃ、死なずに済んだのに。大馬鹿野郎!」
(そう、俺はあのとき、躊躇した)
「俺は奴の患者だったか?だったとして・・患者の命が全てに優先するか?頼まれもせんのに・・医道を本気で一貫させてやがって。死んで何になる!」
(こいつは、そんな出来の良すぎる泥人形・・だった)
「そりゃ、先生は『医者は自分のためにではなく人のために生きるものだ』っておっしゃるが、な」圭吾は線香の煙を見上げた。
「ともかく、お前はまだ生きてる。俺も。情けないけどな、出来損ない同士・・やっていこう。それなりの使い道を見つけるさ、生きてりゃ。慎一郎は、この器が好きだと行っていたし」灯明の許、煮しめを盛った器を見る。
(これは、慎一郎の供養に一番、ふさわしい器だな)
翌日・塾での葬儀、隼人は自他の無言の叱責によく耐えた。
一同で庭に薪を積み上げ、荼毘に伏す。
「とんだ見掛け倒しだったな」
「俺もな」
机上の蝋燭、灯が揺らいだ。
横たわる慎一郎の童顔が、一瞬苦笑したように見えた。
「人に何んぼのこと出来るもんか。無力無能で。見っともなくて、無様で、支離滅裂で。所詮、人は泥人形の裔さ。丁寧に造られようと飛沫だろうと」
「女渦か。畜生、初めから飛沫たあ出来が違う。うん、一瞬でも、躊躇しなかった。してりゃ、死なずに済んだのに。大馬鹿野郎!」
(そう、俺はあのとき、躊躇した)
「俺は奴の患者だったか?だったとして・・患者の命が全てに優先するか?頼まれもせんのに・・医道を本気で一貫させてやがって。死んで何になる!」
(こいつは、そんな出来の良すぎる泥人形・・だった)
「そりゃ、先生は『医者は自分のためにではなく人のために生きるものだ』っておっしゃるが、な」圭吾は線香の煙を見上げた。
「ともかく、お前はまだ生きてる。俺も。情けないけどな、出来損ない同士・・やっていこう。それなりの使い道を見つけるさ、生きてりゃ。慎一郎は、この器が好きだと行っていたし」灯明の許、煮しめを盛った器を見る。
(これは、慎一郎の供養に一番、ふさわしい器だな)
翌日・塾での葬儀、隼人は自他の無言の叱責によく耐えた。
一同で庭に薪を積み上げ、荼毘に伏す。
Posted by 渋柿 at 14:26 | Comments(0)