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Posted by さがファンブログ事務局 at 

2015年05月11日

鯰酔虎伝 6

「えっ?」

「高座名を付けて下さい」

「あんた・・」

「内弟子だろうと内師匠だろうと・・上等です。大家さんとは話を付けますから、噺家として私に名前を付けて下さい師匠」

「朝顔!」

 もう、自棄のやん八だ。

「朝顔、ですか」

「夕顔亭鯰の弟子朝顔・・これでいいんだろ」

 くたばる前に二つ目まで育てりゃあ、奇特な奴が引き取ってくれるかもしれない。誰も弟子にしてくれないってんだから、こいつも内心、その辺が落とし所と踏んでるんだろう。

「ありがとうございます。これから大家さんと話します。師匠の準備ができたら、メモの連絡先へ・・ご一報、お願いします」

「判ったよ」

「協会の事務局にも連絡先の変更、届けといて下さい。私の携帯番号で・・いいですか」

「それっきゃないよ」

 四畳半は狭い。ええこうなりゃもう迷惑の最後っ屁だ、電話も何も一切合財、溜めた店賃代わりに家主に引き取ってもらおう。

「・・お参りさせて下さい」

「えっ」

「おかみさんですね」

 隅っこの、ちっちゃな置き仏壇を見ている。

(さつき・・)

 所帯持って、娘授かって・・お前達のお骨守ってきたこの家とも、これでお別れだな。  


Posted by 渋柿 at 17:04 | Comments(0)