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Posted by さがファンブログ事務局 at 

2009年11月01日

「中行説の桑」【最終回】

 伝説はこう続く。
 無事公主と繭を迎えた王は、国中に桑の木の大捜索を命じるが、漢とはまったく気候が違う于闐では、なかなか見つからなかった。
繭が到着してから桑を探し始めるとは、漢に入朝して予め公主の愛を得てから改めて正式な求婚をしたという于闐王の用意周到さとはまるで平仄が合わぬように思われるが・・この場は伝説をそのまま再録する。
(桑がなければ、蚕は育たない)王と若い妃が絶望に打ちひしがれたとき、人里離れた草原の小さな泉の傍らで数本の野生の桑の木が見つかったという知らせが届いた。
 国王夫妻は馬を駆ってその泉に急いだ。
 確かに、見事な桑の木が青々と葉を茂せている。
 王は妃に向かい、詩の一節を吟じた。

 隰辺りの桑は美しく、その葉は柔らかにしげる。こうやってあなたに逢えました。どんなに嬉しいか知れません。

 妃は続けた。

 隰辺りの桑は美しく、その葉はつややかに沃(うるお)う。こうやってあなたに逢えました。どうして喜ばずに居れましょう。

 繭から出た蚕蛾は卵を産み、蚕は泉の桑の葉を食べて育ち、繭となり、又卵を産んだ。 
 伝説は、こう結ばれている。
 桑の木を探し出した村の古老は、いったそうである。
「この泉のほとりに、昔々、勢い盛んだったころの匈奴の部隊が宿営していたと聞いております」

 タクラマカン砂漠西縁、于闐、現在のホータンは今でも絹の一大生産地として繁栄を続けている。 
  


Posted by 渋柿 at 10:04 | Comments(0)