2010年06月20日

そのまま二度と・・

 満開の梅。出仕しようとして、彼はふと足を止めました。
「梅が、もう咲いたのか・・」
 庭の梅は満開でした。

「すっと前から咲いておりますのに」
 妻は笑って答えました。

 彼は、そのまま二度と家に帰ってきませんでした。
 
 息子は元服を控え、ささやかな幸せの中にあったはずでした。しかし納戸役として、ひたすら真面目に算盤と帳面に向かう日々、花の咲いたのにも気づかない明け暮れに
「自分はこれでいいのか・・」
 と深いむなしさを覚え、彼は出奔してしまったのです。

 作者も題名も忘れたのに、物語は強く心に残っているもののひとつです。

 つい早春になると庭の梅を指し、つぼみから花びらの色が見えはじめた、一輪咲いた、二分咲きになった、メジロが来た・・と、夫に梅の咲いていく様子を刻々実況してしまいます(´ー`;>



Posted by 渋柿 at 20:22 | Comments(2)
この記事へのコメント
今日の、このお話には続編があるのでしょうか?
久しぶりに伊万里日記にふれ、
期待がたかまります。
Posted by 永留 城一郎 at 2010年06月20日 21:09
ありがとうございます。

軽いつぶやきで(^^;
Posted by 渋柿渋柿 at 2010年06月21日 07:13
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