2010年01月15日
「続伏見桃片伊万里」22
「お光さん、あんたはまだ酒毒も浅い。俺あ暫くは畳の毛羽、日がな一日毟ってばかりだった、なあ圭吾」
薬物依存によく見られる同じ動作の繰り返し。
現在の医学では常同行動と呼ばれている。
「ああ、どうせならあの調子で数珠石でも磨きゃあ手間賃くらいにゃあなったのに。人の借り家の畳、三枚も駄目にしやがって」
「畳?毛羽毟り?」
「俺も酒毒さ。お光さん、あんたはあの頃の俺よりずっとましなんだよ。俺と来たら酒切れて」
「刃物あ振り回すし、反吐はいて、小便も漏らしたな」
「この野郎、そこまでいわんでもいいだろうに。まあ、そりゃ本当のことだ。だから今も俺あこいつに頭があがらん」
「いや、近頃は随分・・頭が高くなって来たぞ」
ぷっと、お登世が吹き出した。
(おっと、妻子の前だった)
「あんたら、嫁菜摘みに行きまひょか」
お登世は子供達に笑いながら声をかけた。
「お千代、笊持ってきて」
「慎もいく、いく」
「お昼に、若菜の羹しまひょ、ほな、ちょっといって来ます」
(さすが夫婦だ)
見事な呼吸だった。
膳もまだ下げていない。
姉と弟は、膳がそのままなのをちょっと不審そうに見ていたが、箸を置くと手を繋いで後を追った。
「お子たち、元気どすな」
お光は少し辛そうにいった。
「一人は、実をいえば俺の子じゃないがね」
隼人は、さらりと口にする。
「えっ」
「お千代は、お登世の連れ子さ」
薬物依存によく見られる同じ動作の繰り返し。
現在の医学では常同行動と呼ばれている。
「ああ、どうせならあの調子で数珠石でも磨きゃあ手間賃くらいにゃあなったのに。人の借り家の畳、三枚も駄目にしやがって」
「畳?毛羽毟り?」
「俺も酒毒さ。お光さん、あんたはあの頃の俺よりずっとましなんだよ。俺と来たら酒切れて」
「刃物あ振り回すし、反吐はいて、小便も漏らしたな」
「この野郎、そこまでいわんでもいいだろうに。まあ、そりゃ本当のことだ。だから今も俺あこいつに頭があがらん」
「いや、近頃は随分・・頭が高くなって来たぞ」
ぷっと、お登世が吹き出した。
(おっと、妻子の前だった)
「あんたら、嫁菜摘みに行きまひょか」
お登世は子供達に笑いながら声をかけた。
「お千代、笊持ってきて」
「慎もいく、いく」
「お昼に、若菜の羹しまひょ、ほな、ちょっといって来ます」
(さすが夫婦だ)
見事な呼吸だった。
膳もまだ下げていない。
姉と弟は、膳がそのままなのをちょっと不審そうに見ていたが、箸を置くと手を繋いで後を追った。
「お子たち、元気どすな」
お光は少し辛そうにいった。
「一人は、実をいえば俺の子じゃないがね」
隼人は、さらりと口にする。
「えっ」
「お千代は、お登世の連れ子さ」
Posted by 渋柿 at 05:21 | Comments(0)