2010年01月11日
「続伏見桃片伊万里」20
体内から酒精が抜け切るまでの、自我も崩壊する、嵐。叫び。
お光は暴発を続けた。
灯りを絶やさず、怪我をさせぬよう、また最低限の体力だけは維持するよう、圭吾と隼人は交替で眠った。
ひたすら監視し、時には止むを得ぬ縄目も使い、無理に湯冷ましと重湯を与えて、ただ待っていた。
厠だけは一刻おきに、隼人の妻女・お登世が付き添う。
そして、自我の覚醒は、伏見へ来て三日目の未明だった。
四日目の朝となった。
お光の部屋の格子は、昨日には取り払っていた。
圭吾は久々に、隼人の家族とともに朝餉の膳についた。
隼人の娘のお千代は十ばかり、甲斐甲斐しく母のお登世を手伝う。
弟の慎一郎も姉を見習っている。やっと母屋にもどった父がうれしくてたまらぬのが、わかる。
(いつ来ても、ここは良い)
同門、同年の友はすっかり所帯持ちが板に付いている。
お光の前にも、粥とお登世心尽しの豆腐汁、煉味噌と香物の膳が出ている。
この世帯が朝に豆腐を購っている。
それが年に数度の事ということを、圭吾は知っていた。
(これは!)
お千代の可愛い給仕に飯を受取ったとき、圭吾は息を飲んだ。
気がつけば全員の飯碗が、
(違う!)
普段使いのものではなかった。
冴えた白磁に呉須(濃藍)で、外側には一面の牡丹唐草文様の飯茶碗だった。
今は飯にかくれて見えないが、内側にも淵に帯唐草が施され、底には小さく松竹梅が描かれている筈だった。
(伊万里染付、柞の木の灰釉だ)
隼人とお登世の祝言の折り、圭吾が伊万里の実家から取り寄せて祝いとした、五客揃であった。
お光は暴発を続けた。
灯りを絶やさず、怪我をさせぬよう、また最低限の体力だけは維持するよう、圭吾と隼人は交替で眠った。
ひたすら監視し、時には止むを得ぬ縄目も使い、無理に湯冷ましと重湯を与えて、ただ待っていた。
厠だけは一刻おきに、隼人の妻女・お登世が付き添う。
そして、自我の覚醒は、伏見へ来て三日目の未明だった。
四日目の朝となった。
お光の部屋の格子は、昨日には取り払っていた。
圭吾は久々に、隼人の家族とともに朝餉の膳についた。
隼人の娘のお千代は十ばかり、甲斐甲斐しく母のお登世を手伝う。
弟の慎一郎も姉を見習っている。やっと母屋にもどった父がうれしくてたまらぬのが、わかる。
(いつ来ても、ここは良い)
同門、同年の友はすっかり所帯持ちが板に付いている。
お光の前にも、粥とお登世心尽しの豆腐汁、煉味噌と香物の膳が出ている。
この世帯が朝に豆腐を購っている。
それが年に数度の事ということを、圭吾は知っていた。
(これは!)
お千代の可愛い給仕に飯を受取ったとき、圭吾は息を飲んだ。
気がつけば全員の飯碗が、
(違う!)
普段使いのものではなかった。
冴えた白磁に呉須(濃藍)で、外側には一面の牡丹唐草文様の飯茶碗だった。
今は飯にかくれて見えないが、内側にも淵に帯唐草が施され、底には小さく松竹梅が描かれている筈だった。
(伊万里染付、柞の木の灰釉だ)
隼人とお登世の祝言の折り、圭吾が伊万里の実家から取り寄せて祝いとした、五客揃であった。
Posted by 渋柿 at 16:43 | Comments(0)